国際契約書の作成
制定法があるのに、契約で詳しく書くことの意味
国際取引、国内取引において、民商法などの法律ですべてが妥当に解決するわけではありません。そこには必ず、規定がない部分があります。 また、法律の定めが妥当な結果をもたらすとは限りません。
法律が想定している事例と現実とがうまくマッチしなかったりすることがよくあります。
したがって、経営上のリスク回避として、予測可能性を高めるためには、法律や条約、判例などによって解釈される余地を出来るだけ狭め、契約の上で、出来るだけあらゆる事態が予測できるように規定されていることが望ましいと言えます。
つまり、妥当でない任意規定を排除したり、法律で欠けている部分を補うことが、契約には求められます。
国際取引における特殊性:準拠法の問題
●国際取引契約の最大の特徴は、準拠法が決まらない、ということ。●裁判になってみないとどこの国の法律や条約が適用になるのか、予測可能性が低い。
任意規定の排除例
○所有権の移転民法:売買契約の締結時点で、買主に移転する。
→ 企業間取引では、通常代金は後払い。所有権だけ移ってしまって良いのか?
○危険負担
民法:契約後、建物が火事で焼けたら買主が負担(代金を払う必要あり)。
→まだ建物が買主に引き渡されていない場合、公平だろうか?
○瑕疵担保責任
民法:瑕疵があった場合、解除と損害賠償ができる。
→修理や代品交換義務については規定されていないが、それで良いのか?
○期限の利益の喪失
(期限の利益とは期限が来るまで債務を履行しなくて良いという利益)
民法:破産手続きが開始されたら喪失する。
→不渡りを出しても、法的な破産手続が開始されるわけではない。
任意規定の欠落部分の補充
○イニシャルペイメント(ライセンスを受けるとき最初に払う金銭)特に定めた法律はない。また、商慣習もない。
→では、ランニングロイヤリティーに充当されるのか(?)
→契約で定めるべき。
○検 収
特に定めた法律はない。商慣習も一義的とはいい難い。
→検収がされたことに対する効果が何か、が不明確
→契約で定めるべき。
○独占的ライセンス
独占的といっても、許諾者自らの実施(販売)ができなくなるとは限らない。 (特許法にいう、「専用実施権」とは違う場合がある)
→契約で明確にする必要あり。
予備的合意
予備的だから効力がないという訳ではない。 →予備的合意に従った本契約を締結しなければ、賠償問題になる。
また、予備的合意事項を変更することには、困難が伴うので、要注意。
仲裁手続き、裁判管轄、準拠法
○「仲裁手続き」Arbitration 多くは、裁判にはしないで、仲裁で解決したがる→迅速性と予測可能性を担保。
○「準拠法と裁判管轄」Governing Law & Jurisdiction
準拠法(どの国(州)の法律に従うか)の問題と、どこで裁判(仲裁)するかは別問題。
→どちらも、予測可能性を高めるために、規定しておくべき。
債権回収リスクの回避
日本国内でさえ債権回収は難しい。ましてや外国企業からどう取り立てるか?→不払いのことを想定するのではなく、不払いにならないような予防策を規定しておく。
<例> 担保や保証金の取得、前渡金(プリペイメントと債務への充当)、解除の簡易化。 L/C、手形 など
貿易条件
FOB,CIFなどの単語が定義なく使われる場合があるが、国によって内容が異なる。 →国際商業会議所(ICC)が制定した規約に基づく「貿易条件」とすべき。
「2000年に制定のインコタームズに定められたFOB,CIFなどに従う」という規定のされ方をする(契約中には細かい条件がかかれない場合が多い)
→次の3つがよく利用される。
例:FOB :本船渡。売主の責任は船積港での船積みまで。海上運賃は買主負担。滞船料は買主負担
C I F :運賃保険料込渡。船積港から目的地までの運賃、保険料を売主が負担。
C & F : FOBとCIFの中間、海上運賃は買主負担、保険料売主負担。
若干の特殊な用語
○「ShallとMay」shall「しなければならない」 (= must) > should > will (日本文では全部「ねばならない」)
may 「することが出来る」
○「AgentとDistributor」
どちらも日本だと「代理店」と訳されることが多いがDistributor は、代理店ではないことが多い(単なる販売店)。しかし、一義的に明確になっている訳ではない。
→契約でその権限や取引の態様について、取り決めておくべき。
○「源泉課税」(ライセンス契約などにおける)
日本における役務取引等に日本国政府から課せられ、日本企業が源泉して納付する必要。
→米国企業はあまり知らない場合があり、 「なぜ日本の税金を米国企業が負担しなければならないのか?」という主張をされることがある。
○「不可抗力免責」
書いていないと不可抗力による免責を受けられないことがある。
○「完全合意」
書いていれば、口頭証拠が排除される(書いていないと排除されない場合がある)。
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